ロゴスパニックごあいさつ

1995年11月17日発売/ユタカ/14点

 えー……一応、対戦パズルゲームではあるんですが……なんとも表現が難しい作品です。評価は簡単なんですけど。

 パズルゲームの開発というのも、簡単そうに見えて難しいもので、基本となるシステムがシンプルであればあるほど、後付の工夫によっていくらでもゲームは奥深くなるものなんですが、肝心の基本システムを不必要にややこしくしてしまうと、プレイヤーが初っ端にくじけてしまい、いくら細部がこだわっていても、評価はクソゲー一直線です。
 その辺は、実際にパズルゲームのヒット作を見ていただければ一目瞭然ですね。

 ところが、不必要に野心に溢れたクリエイターには、どうしでもそれが解らないようで、最も基本的なところを複雑に斬新にしさえすれば、ゲームとして奥深くなるんだ、と勘違いする人が後を絶ちません。「独自性」というのはいい言葉ではあるんですけど、その中身の肉が決して美味になるとは限らないんですけどね。
 そして、本作のシステムをデザインした人も、恐らくそういう野心に踊らされていたのではないかと思います。
 まあパッケージが、しりあがり寿氏デザインの、色気という要素の対極にある女性のピース姿なので、これに本格パズルを求めて買う人もいないでしょうけど……。
 で、そのような革新性を大胆に取り込もうとした本作が、パズルのルールとして取り上げたのが「サラリーマンの挨拶」です。

 斬新にもホドがあります。

 テトリスで言うところの「テトリミノ」の代わりに「文字」がランダムに出現。その文字を、縦でも横でも斜めでもいいので並べて、5×5のマスの中で、キャラクターごとに設定された三つのキーワード(これがサラリーマンの挨拶らしい)を組み立て、どんどん消していく、というルール。

 どこがおかしいか、おわかりになりました?

 そう、ブロックを消すための「キーワード」は三つしかないのに、それを組み立てるブロック(文字)は、五十音+濁音+半濁音+長音……つまり、70種類以上もあります。
 要するに、大半のブロックが消去不可能という前提で出現するという驚くべき事態に陥るわけです。最初から
 四方を爆弾に囲まれた状態でスタートするボンバーマンみたいなもので、一応対戦形式ではあるのですが、「いかに相手を負かすか」ではなく、「対戦相手そっちのけで、いかに一秒でも長く生き残るか」に必死になります。なにせブロックの殆どがゴミなわけですから、相手の力量など関係なく、勝負は異様にスピーディー。

 また、一番キモであるキーワード(サラリーマンの挨拶)が、どう見ても日本語になってないあたりが凄すぎます。
「オヤーンス」「モシシッ」「ブホー」「プシュウ」「ベロオオオ」
 どこの星のサラリーマンの挨拶だよコレ!
 こんなの取引先のお相手に使ったら、会社に帰った途端に精神系の病院に入院させられるわ!

取 「おはようございます」
私 「オヤーンス」
取 「では早速、例のプロジェクトについて……」
私 「ベロオオオオ」
取 「では、その見積もりでお願いします」
私 「モシシシッ」
取 「ありがとうございました」
私 「プシュウウウ」

 地球外生命体とNASAの会話です。

 色々と書きましたが、一番驚いたことは、ひょっとしたらコレ、「もじぴったん」と同じ考え方から発生したルール?
 なにがどう狂ったら、こんなキワモノになってしまうのか……。

(2008.08.20)