バテン・カイトス

2003年12月5日発売/ナムコ/80点

 色んな意味で、非常に惜しい作品です。
 シナリオ、音楽、キャラクターと、ゲームを構成する要素はどれも一級品ながら、ところどころの細かい不満点が、喉に刺さった魚の骨みたいに残っちゃうんですよね。

 プレイヤーが「主人公に憑依している精霊」という設定で、主人公がプレイヤーに語りかけることで物語が進行するという手法は好き嫌いが分かれると思いますが、ゲーム世界への没入感(なんだそれ)が素晴らしく大きく、「共に冒険をしているんだ」という感覚は、他のRPG作品よりも一枚も二枚も上です。
 シナリオの前半部分はちょっと先が読めてしまいますが、後半になると、いい意味でさっぱりワケがわかりません。主人公とヒロインが再会する場面や、精霊であるプレイヤーと主人公の別れの場面などは、思わず涙ぐんでしまいます。また、これも素晴らしい点として、伏線の張りかたが凄く上手いんですよ。だからといってぐだぐだにすることなくきちんと解決しているのは、シナリオライターさんの実力の素晴らしさでしょうね。
 力技で無理やりハッピーエンドに投げ飛ばすかのごときエンディングはちょっとどうかと思いましたが、それでもこの作品ならアリかな、と思えてしまうから不思議。
 ただそれだけに、シナリオ中盤の中だるみがなければなー、というのが惜しいところ。また、これが本作の特徴でもあるんですが、本作でムービーがあるのはなんとオープニングのみ。エンディングすら会話で終わってしまいます。このあたりをもうちょっと作りこんでくれれば、間違いなく神ゲーだったんですが…。

 絵の方は、流石に今見るとちょっと落ちますが、それでも幻想的な色使いが非常に綺麗で、不思議な雰囲気を出しています。このあたりの演出は、魅力的なキャラクターと重ねてみて魅力が倍になっており、非常に好きです。
 ただ、キャラクターがかなり小さいのは残念。街なども目をこらして見ないと、どこになにがあるのか、通れるのか通れないのか解りづらいです。もともとムービーではなく、キャラクターの挙動でイベントが進行していくタイプのゲームなので、どうしても地味になってしまいがち。
 このあたり、もうちょっと作りこんでくれれば間違いなく(以下略)。

 そして、本作の特徴であり、一番話題となった戦闘です。
 本作はありがちなコマンド選択式ではなく、カードバトルに近い様式をとっているのですが、ぶっちゃけだりぃ!
 決して難しいとは言いませんし、やってて楽しいとすら思うんですが、異常に時間がかかるんですよ。このあたりもうちょっと(以下略)。

 あと一本、あと一本ネジのかけどころを間違いさえしなければ間違いなく神ゲーに化けることが出来た本作。
 魅力的なキャラクター、例がないほど素晴らしい音楽など、そのための要素は手を伸ばさずとも、元々備わっているのです。
 システム的には続編に期待したいところですが、シナリオ的には完全な結末を迎えちゃっているので、続編をやりたくないとも思えてしまうこの不思議な感覚。

 ああ、仏の掌の上で踊りまわる孫悟空のような気分ですね。

(2006.03.08)