初音ミク Project DIVA Arcade

2010年6月25日発売/セガ/91点

 こんにちは、初音KEEFです。
 嘘ですごめんなさい。みっくみくにしてください。
 私は「初音ミク」自体はつついたことはないのですが、隠さずに言うと、どういうわけか「恋スルVOC@LOID」と「えれくとりっく・えんじぇぅ」に感動中枢を直撃されてしまい、それ以来のミクファンです。

 本作は、PCで大ヒットし、ツールやゲームの枠を超えて社会現象にまで発展した音楽ツールアイドルのさきがけ「初音ミク」のアーケードゲーム版。
 PC版は、音楽を製作し、それに「ボーカロイド」ことミクの人工音声で謳わせることができるという、これだけでも画期的なツールでしたが、その後、極まった有志によってとんでもないレベルの様々な支援ツールが開発され、「3D格闘ツクール」みたいな感覚で実際にミクを躍らせることができるツールまで登場しました。
 家庭用に進出したPSP版では、作曲ツールではなく、リズムゲームとして登場。
 PC版で発表された数々の名曲(一般の音楽CDを抑えて、オリコン週間アルバムランキング1位を獲得したことも)が収録され、初音ミクの歌とダンスを背景に、発狂しそうな勢いで乱れ飛ぶマークの嵐に、もう脳から発せられる神経速度がついていかず、指がどのボタンを押せば良いのか認識しきれずに痙攣しているありさま。
 ミクをお着替えできる「モジュールコンバート」を目的に購入したお兄さん達の下心を、ものの見事に粉砕していました(とはいっても、エロい衣装は無いけど)。
 恐るべきボーカロイド! ミックミクにされた廃人達が世にあふれ出ているさなかに発売されたのが、このアーケード版です。

 基本的にはPSP版を下敷きにしているものの、グラフィックなどは新たに書き起こされ、専用筐体で登場という力の入れよう。
 ちょっとプレイするのが恥ずかしい気もしますが、「オトメディウス」よりはマシ。
 昨今の流行に乗って、専用のカードで個人情報を登録することができ、ゲームのクリア状況によってポイントをためることができます。
 で、ためたポイントによって初音ミクの衣装を購入・変更することができ、画面内のミクで歌ったり踊ったりするミクの衣装もちゃんと変わります。
 もともと、昨今の薄着化・露出ブームの中にあって、ミクはどちらかといえばスレンダーな体型ですが、それだけにへんな「いやらしさ」が無く、用意されている衣装もそのあたりをよく心得ていて、制服やドレスなど、狙いどころははっきりしているものの、デザインそのものは清純さとエロさのキワキワで押さえているあたりはさすがです。
 ただ、ミニスカートのときの黒パンツはどうかと思うがな。
(そういえば、二次創作の世界では、すっかり「初音ミク = 縞パンツ」というのが定着していますが、これって公式とは違うんですよね。いつから定着したんだろう?)

 そのポイントをためるためには、当然、リズムゲームをクリアしていかなければなりません。
 難易度によって使うボタンの数は2〜4個と違うものの、基本的には、画面外から現れるマークに対応するボタンを、曲に合わせてタイミングよく押していく、というスタンダードといえばスタンダードな方式。
 ただ、他のリズムゲームと違う点は、タイミングを教えてくれるマーカー(ターゲット)の位置が固定されておらず、画面内のありとあらゆる場所にあらわれる、ということ。
 どういうことかというと、普通のリズムゲームは画面下などに数本のラインが引かれており、そのライン上を流れてくる音符が、一定の位置にさしかかったらボタンを押せばよいのですが、このゲームの場合、その「一定の位置」が一定ではなく、画面のどこに現れるのか直前にならないと分からないのです。
 そして、その目標が現れたかと思うと、画面外から対応するメロディアイコンが飛んできて、ボタンを押すタイミングを教えてくれます。
 要するに、「反射神経重視の音楽つきモグラ叩き」。もっと言えば、「めちゃめちゃハードになったユビート・リプルズ」。

 これ、やり方はわかるんだけど、実際にプレイするとかなり大変です。
 もぐら叩き、といえばそうなんですけど、一瞬のうちに確認しなきゃいけないことが普通のリズムゲームよりも多いので、かなり反射神経を要求されます。
 愛しの初音ミクとの甘いジュークタイムを楽しみたいのはやまやまなんですが、そんなこと期待してたらまずクリア不可能。
 ミクの歌とダンスに見惚れて、ボーっとしているヒマなんぞありゃしません。
「ワタシは歌うのが好き。ワタシがそう作られたからじゃない、この声を好きだというアナタが喜んでくれるから」
 と歌うミクさん(濃いファンの呼び方)の精神に報いるためには、ビブラートでごまかさずに反射神経を全開にしなければならないわけですが、神経細胞を消耗しながら必死に画面をおいかけボタンを連打していても、クリアできないとミクさんの心を満たすことができず、彼女は笑顔のままで他のライバル(プレイヤー)の元に去ってしまいます。
「イージーモード」はまだ2つしかボタンを使わないので救われてますが、ボタンを4つも使うモードはもう、私などではとてもついていけません。
 こんな忙しい「Iavan Polkka」とか聞いたこともないわ(笑)。
 PSP版が発売されたときに、トロステーション970回で、クロが「慣れてくると画面に現れるメロディアイコンも含めてミクのダンスに見えてくる」とか言ってましたが、そこまで慣れるのは凄く大変です。
 お前は凄いよ、クロ(笑)。

 この「初音ミク」、他のリズムゲームと決定的に違う点がもうひとつあります。
 それは、(あくまで私の周囲では、ですが)「プレイヤーのイヤホン使用率が非常に高い」ということ。
 普通、リズムゲームをプレイするときは、自分の華麗なテクニックでギャラリーを魅せるのも楽しさの一つのため、音楽が周囲に聞こえることが望ましいのですが、本作では、ミクさんとの短い逢瀬を濃密に楽しみたいのか、それとも歌が外に漏れるのが恥ずかしいのか、イヤホン持参でプレイする人を多く見ました。
 それだけ濃いキャラクター性を持つゲームなんですね。

 私は初音ミクと、彼女に命を与えた多くのクリエイターの方々を愛してやまないため、少々ポイントが甘くなっています。
 オリジナルとしては最高レベルの楽曲を収録している。
 歌そのものは人工音声である。
 リズムゲームとしては少し毛色の違うシステムを搭載している。
 なによりも「初音ミク」という存在をアーケードに送り出した意義。
 プレイする際にこれらの要素を考慮にいれると、楽しさが変わってくるかもしれません。

 そしてあなたも、みっくみくにされてみませんか?

※豆知識※
 ちなみに、この「初音ミク」、なんと世界記録の所持者でもあります。
「livetune feat.初音ミク」という名義で発売した「Re:MIKUS」というアルバムが、CDの録音時間としては世界最長の80分45秒