2006年に登場した、実に不思議な世界観と感性を持つシューティング。
後に家庭用に移植されましたが、ドリームキャスト最後の作品としても一部に有名ですね。
……というか、ナオミ基盤で製作されてるんで、最初からドリキャスへの移植が前提だったのかもしれませんが。
天空人と地上人とのハーフである少女カラスを操り、襲い来る敵を撃墜していきます。
デモを一見すれば、深い設定があるゲームなのかなと思うのですが、実際にゲーム画面を見た感想は、えらく質素で素朴。
2005年のシューティング「ラジルギ」か、大昔にファミコンで出た「ツインビー」がグラフィックの感触として近いですが、プレイステーションの「デザエモン」にも、これに似たサンプルゲームがあったような気がします。
要するに、グラフィック的には一昔前の代物。
また、主人公の体力ゲージの横には、なんだか萌え系の四コマ漫画なんかに登場しそうな、ヘタレな女の子の顔グラが、状況に応じて驚いたり泣きそうになったりしています。
ひょっとして主人公のカラス?
ボス登場直前にボスの情報をくれる女の子の「〜でシュー」という妙な口癖や、絶妙に下手かわいいグラフィック、戦闘中に多くのメールを受信する謎のセンスなど、ぶっちゃけこれ、同人ゲームだろ?
いや、ゲームとしてのデキは悪くないし、最近じゃ同人シューティングのデキがとんでもないことになってて、そのへんの適当に作られた家庭用シューティングなんて相手にならないものもあるんですけど、この本作の不思議なセンスは、業務用でやるにはちょっと勇気がいると思います。
本作のシステムの面白いところは、RPGのような成長システムを搭載していること。
本作には、ショット(画面上まで届くが威力は低い)とソード(攻撃範囲は狭いが威力が高い)という二種類の武器と、シールド(ボタンを押さないとある程度敵弾を防いでくれるが、万能ではない)という三種類の要素があります。
ショットやソードは、その武器で敵を倒すごとに「経験値」がたまっていき、一定量を超えるとレベルアップして威力が上昇します。
少しだけ威力が上がるパワーアップアイテムもあるにはありますが、積極的に敵を倒して武器をレベルアップさせたほうが効率が良いようです。
また、武器のレベルと同様に自分自身もレベルアップしていき、自身のレベルに応じてスコアの倍率が変わってくるため、スコアアタックのためにも、強気で攻めたほうがいい結果が出ます。
ただ、近接武器のソードは、あまりに攻撃範囲が狭いために使い勝手が悪く、なかなかレベルアップしませんので、結局はショットでゴリ押し、という場面が多くなってしまいますが。
ゲームスタート時に選択できる三種類の難易度のうち、「イージーモード」は、ほぼ全ての敵弾が自分のショットで相殺できてしまうため、ソードの出番はまずありません。
上級者モード用の武器ですね。
さて、本作をプレイしていてもっとも気になるのが、常に画面下部に表示されている「メール」。
いや、書き間違いではなく、文字通り、本当の意味での「メール」です。
さまざまな場所から発信されているようで、常に何らかの情報が表示されています。
中にはゲームの攻略に役立つような情報もあるのですが(誰が発信しているのか謎ですが)、凄いのはその内容の大半が、ゲームに関係ない、本当にどうでもいいものだということ。
「有名ブランドの商品が●割引き! ●●や●●が信じられないお値段で!」
いや、確かにお買い得なのかもしれないけど、送る相手を間違えてるだろ。
「きみ、コミコミには行った? ボクは混雑がいやなので初日だけ行ったよ。
目的のものだけ買って退散したけど、キモいコスプレが多かったね」
丁寧に顔写真つきで送ってくれてますが、君の顔の方がキモイ。
コミコミとはコミケのことでしょうけど、ひょっとしてこれ、製作スタッフの本音か?
「眼鏡をかけているからといって、安易に眼鏡っ娘と呼ぶのは、相手に失礼だ!」
確かにその通りです。ははぁー!
でも、これを送ってきているのは、主人公の仲間。テメェ、戦闘中になに仕事さぼってんだ!
「SPAM! 添付ファイルは削除されました」
知らねぇよ♥
こんな感じで、製作中のスタッフの本音や思いついたネタを思いついたままに突っ込んでいるようで、ゲンナリすることはないんですけど、確実に力が抜けます。
カラスはもっと通信機のスパム対策を強化するべきだ。
一世代前のグラフィックや面白いシステム、そして謎のセンスなど、なかなか不思議な感触のシューティングです。
サウンドの完成度が非常に高く、またシューティングとしての下地は骨太なので、面白いのは確かに面白いのですが、この不思議なセンスに触れてみて拒否反応が出るかどうかで、好き嫌いは分かれそうですね。