(この項目は、一巻〜三巻の内容をまとめて感想を書きます)
私(= KEEF)が以前からハマッていた海洋SF戦記漫画&アニメ「蒼き鋼のアルペジオ」のスピンオフ漫画。
作者はTALI(脚本・タカフミ、作画・銀子によるユニット)。ヤングキングコミックス、全三巻。
原作は、謎の艦艇群「霧の艦隊」の攻撃により、人類が世界の海から駆逐されてしまった時代。
人類は大陸間の通信手段を失い、欧州は戦争に明け暮れ、17年前の海戦で「霧の艦隊」に大敗北を喫して以降、衰退の一途を辿っていた……。
その「霧の艦隊」の重巡洋艦のメンタルモデル・タカオが、人間世界に溶け込んで、横須賀の「海洋技術総合学院」でドタバタ学園生活をおくるはなし。
タカオはかなりケンカっ早い性格だが思いやりがあり、その頼りがいと人間離れした運動神経で学院内ではちょっとした有名人。
同学年のキドケイ、サメジマリンコとその幼馴染キジマトキオとともにバンドを組んでいる。マキシマジョージのラーメン屋が行きつけの場所。
原作で好きな重巡洋艦のメンタルモデル・タカオが主人公なので、怖いもの見たさで買ってみた。
その結果。
……ごめん、私には無理だった……。
正直、ツッコミどころしか見つからず。
内容について書きたいけど、悪口しか出てこないうえに私が病気になりそうなので、箇条書きで思ったことを書いてみる。
……etcetc。本気でツッコミを入れたらまだあるだろうけど、とりあえず気になったところを挙げてみた。
正直に言うと、幼稚園の頃の自分が書いた物語を読みかえして、なんとも言えないもどかしさで体中をかきむしりたい時のような心境だ。
シリアスモノのはずの原作のギャグシーンのほうが、本作の100万倍キレッキレ。原作のサクラ(タカオの後輩。本作未登場)のほうが、ケイやリンコなどより、よほど生き生きしている。
また、ギャグ作品としては、同じ原作を持つスピンオフ「クロスライン」(ムサシマル)のほうがブッ飛んでいて1兆倍面白い。
(そもそも、「漫画」としてのレベルが、この二作品とは比較の対象にもならない)
パウルくん(蛸)と犬の会話シーンなど、あまりに寒すぎて、つい単行本を破り捨てて踏みつけて燃やしそうになった。「パウルくんのおかげで蛸に詳しくなったね」と作者は大満足だが、はたして「アルペジオ」のファンで蛸の知識を求めている人がいるのか?
(しかも、蛸の生態に詳しくなったはずなのに、それがまったく漫画に活かされていない)
どうも、「スピンオフの漫画を手に取る読者は、基本的に原作のファンだ」という思考が、作者の頭に出てこなかったように見受けられる。
キャラクターの名前をカタカナにしたり、オリジナルキャラクターを多数出すなど、独自性を強く出そうとして大失敗しちゃったね。
「原作愛はまったくないけど、仕事として引き受けたからには、これを踏み台にして半オリジナルにしてのし上がってやるぜ!」……という、寒い意志の存在をひしひしと感じる。
その結果、逆に原作の偉大さと、自分のセンスのなさを大暴露しちゃった。
そもそも、原作を足蹴にすることを全否定する気はないが(もちろん絶対に良い事ではないけど)、その意志が読者にバレバレになるようでは、漫画家としてのレベルが低いといわざるを得ない。
それとも、二次創作にはむかないユニットなのかな。基本はオリジナル路線でやっているらしいし。
けっこうボロクソに書いたしまったので、少しだけフォローしておく。
以上のことを踏まえて、この作品に1mmも存在価値がないかというと、決してそんなわけではない。
この漫画文化の成熟したと思われる日本でも、21世紀になって、こんな糞みたいに寒いセンスの漫画が出てくるということは、日本の漫画文化の懐の深さだと思う。
漫画家志望や脚本家志望の若者には、ぜひ本作を読んでもらいたい。脚本家として、漫画家としてやってはいけないこと、読者からソッポを向かれるネタの作り方が、本作にはすべて凝縮されている。
ぜひ本作を読んで、そのノウハウを勉強してほしい。
まあ、原作はアニメ化も映画化もするほど大人気なので、タカオ好きなら読んでみてもいいかも。402好きやズイカクファンにはお勧めしない。
私はコミック三冊分の価格、約2000円をドブに捨てちゃったなあ。
単行本は友人にプレゼントしたのだが(もちろん「アルペジオ」はよく知っている)、その友人の感想は、「この鬱陶しい天然男(オリジナルキャラのキジマトキオ)、いつ退場するのか楽しみに読んでたのに……」だった。
すまん、そいつは退場するどころか、出番が増える一方だ。
画力 | 絵は下手ではないが、原作に似せる努力もない。すっかりオリキャラ化。 |
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脚本 | 原作を知っていたら絶対零度。知らなくてもたぶん氷点下。 |
お勧め度 | −2兆点/100点。公式の流通ルートに乗ってしまった粗悪すぎる同人誌。 |
原作愛 | −3兆点/100点 |
備考 | タカフミ氏には転職をお勧めする。できれば頭を使わない職種で。 |
(2017.07.10)